風景写真を幻想的に仕上げる方法があります。
プロの撮った風景写真やコンテストの入賞風景作品でよく使われる方法をです。
今日は長時間露光で風景写真を幻想的に仕上げる方法をマスターしましょう!
具体的には「NDフィルターを駆使した風景写真の撮影」についてお話ししていきます。
長時間露光撮影とは
長時間露光撮影とは、カメラのシャッタースピードを遅く設定する撮影方法のことです。
三脚を使いカメラを10〜30秒ほど固定して撮影するので、うまくハマれば人間の目では見えなかったような幻想的な風景を写し出すことができます。
ただし明るいロケーションでは、長時間露光をしようとしても白飛び(写真が明るすぎる状態)を起こしてしまいます。
NDフィルターを活用することで日中や朝夕のマジックアワー等の明るいロケーションでも長時間露光撮影が可能になります。自分が思っても見なかったような幻想的な写真や、動きのある個性的な写真が撮れるようになりますよ。
長時間露光で撮る風景写真の作例 波・海・雲・滝
なぜシャッタースピードを遅くする必要があるのでしょうか。シャッタースピードをコントロールできるようになると、写真の表現の幅が倍増するからです。
例えば…
波に動きを出して撮る
シャッタースピード 1秒 ND64使用
海岸の波がまるで雲海のように映る
シャッタースピード 30秒 ND64 + ND1000使用
雲に動きを出して撮る
シャッタースピード30秒 ND1000使用
滝や川を絹のように撮る
シャッタースピード1/4秒 ND8使用
同じ場所で同じ時間に撮影しても、シャッタースピードが違うと、全く違った印象の写真が撮れます。現地でいろいろなバリエーションの写真が撮れた方が良いですよね。
露光時間が長くなればなるほど予想のつかない写真になるので、他人と違う写真になりやすい、個性的な写真を撮れるというのがメリットです。
日中の長時間露光にはNDフィルターが必須
明るいロケーションで長時間露光をする場合、NDフィルターが必須です。
NDフィルターは、neutral density の略。つまり写真の色を変えることなく、カメラに入る光の量を減らす効果があります。私たちがカメラだとしたら、NDフィルターはサングラスのようなものですね。
どんなときに必要かといえば、例えば「雲に動きを出したい」とき。雲はたいていゆっくりと動くので、この動きを1枚の写真に写し続けるには、シャッタースピードを30秒〜数分にする必要があります。
この時、ISO感度を最低、絞り(F値)を一番絞った状態でも、30秒もの長い間センサーに光を当て続けるので、ほとんどの場合写真は白く飛んでしまうんです。
(また絞りすぎると、回折現象が起きてレンズ本来の解像感が損なわれることもあります。)
そこでNDフィルターの出番。白飛びを抑えつつ、長いシャッタースピードを確保できます。
NDフィルターは、明るいロケーションでも無理やりシャッタースピードを長くしたい風景写真家の願いを叶えてくれる最強のツールなんです。
どのNDフィルターが必要なの?
NDフィルターと言ってもたくさん種類があるので、何を買ったらいいか分からないですよね。風景写真では、これからご紹介する3つのNDフィルターがあればOKです。
ND8
ND8は滝や川、波に動きをつけるときに便利です。朝・夕方の薄暗い時間帯や曇りの日のシャッタースピードの微調整に使いやすい。一番使用頻度が高いと思います。シャッタースピードのイメージは1/4〜1秒。
ND1000
ND1000は雲を流したり、波を雲海のように撮るときに使用。基本的に動いているものは消えます。川や波を撮ると白い霧のようになり、写真に非現実感を出すことができます。シャッタースピードのイメージは30秒〜。
ND64
ND64はND8とND1000のちょうど中間の濃度。使用シーンとしては、ブルーアワー、マジックアワーとも呼ばれる朝の日が出る前の時間帯や、夕方の日が落ちたあとのわずかな時間帯に使用。ND8では足りないがND1000だと濃すぎる場合がある。出番は少ないが、いざという時に必要不可欠です。
日が登りきった時間帯の撮影や、1〜2分以上の長時間露光をする場合は組み合わせてさらに濃いNDを作ることもあります。
組み合わせパターン
ND8 + ND1000 = ND8000
ND64 + ND 1000 = ND64000
理論上この組み合わせでND64000まで対応できるので、ほとんど全てのロケーションにこの3枚で対応できるようになります。
本格的なフィルターワークには角形フィルターシステム一択
ここまでNDフィルターを使った長時間露光についてお話してきましたが、「風景写真でNDフィルターを使って独創的な写真を撮りたい!」と考えている方には、角形フィルターを強くおすすめします。
丸型フィルターは脱着に手間がかかる
一般的なカメラフィルターはねじ込み式の丸型フィルターです。こちらは角形フィルターと比較してシンプルな構造なのでかさばらない・コスト面で安くすむというメリットがあります。
しかし、レンズの先端にねじ込む動作が、一瞬も逃せない撮影時の大幅なタイムロスにつながったり、クリエイティブな思考の邪魔になったりします。
例えばND1000を使って写真を撮るとき、構図決めやピント合わせはND1000を外さなければできないわけですが、1枚撮る→NDをくるくるして外す→構図・ピント合わせ→NDくるくるして着ける→撮影…ピントが合ってないような気がするのでNDくるくる外して確認してもう一度つけて…といったように、撮影フローの中で「NDをねじ込む動作」が非常に時間がかかる&気が散るんです。
丸型フィルターを使ったことがある方はあるあるかと思いますが、なかなかレンズのフィルター溝に噛まずに...なんて経験ありますよね。だいたいの方はこれが一因となってNDをつけなくなり、タンスの肥やしになっているなんてこともあるかと思います。
角形フィルターはモノによってはレンズくらい買える価格ですが、使わなくなるNDに投資するより断然コスパがよいといえます。丸型フィルターを持っていったのに、いざという時にめんどくさくなって使わなかったりして、後で「あの時NDを使っていれば…」と後悔するのは一番避けたいですよね。
角形フィルターのメリット
角型フィルターは一式で買うとコスト的にかなりお高いですが、コストに見合ったメリットがあります。
- フィルターの交換が早い
- フィルターの重ね付けがしやすい
- ND1000などの高濃度NDをつけた際の構図変えやピント調整がしやすい
- 重ね付けでケラれない
- ハーフNDが使える
- プロっぽい、かっこいい ← これも重要!
撮影中のフィルターワークに関わるすべてのオペレーションがスピーディーで、シャッターチャンスを逃さないのが角形フィルターのメリットです。
つまりプロ仕様というわけです。
まとめ
風景写真で長時間露光撮影が出来るようになると、表現の幅が何倍にも広がります。
何より、自分の想像を超えた思わぬ写真が出来上がるので、撮っていて非常に面白いです。
スタイルのある風景写真を撮りたいという方にはおすすめの撮影方法です。
ぜひ挑戦してみてください。